厚生労働省のカスハラ対策資料は、厚生労働省サイトの「職場におけるハラスメントの防止のために」と、同省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」の2か所から入手できます。事業主が講じなければならない措置の中身を定めているのは法律と指針(令和8年厚生労働省告示第51号)で、解釈Q&Aはその読み方を示し、企業マニュアル・リーフレット・ポスター・研修動画は理解と周知に使う資料です。2026年10月5日に確認した時点で、解釈Q&Aは9月30日に改訂されて問の番号が変わり、企業マニュアルは9月8日に更新されていますが、指針の告示前に作られた教材も同じサイトに並んでいます。
この記事は、資料の所在と日付、使い分けをまとめた一覧です。資料の中身の説明は、各節からリンクする記事に譲ります。
資料は2つの入口にまとまっている
1つ目は厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」です。指針、解釈Q&A、通達、リーフレット、パンフレットは、カスハラと求職者等へのセクハラの義務化の節に載っています。企業マニュアルとポスターがあるのは、カスタマーハラスメントの節です。改正法そのもの(令和7年法律第63号)の概要・条文・新旧対照と、施行期日を定めた政令は、別ページの「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」にあります。
2つ目は「あかるい職場応援団」です。資料ダウンロード、研修動画、業種別の取組支援、企業事例、裁判例、相談窓口の案内があります。同サイトの改正法の特設ページは、改正法・指針・Q&Aについては厚生労働省のページで確認するよう案内しています。
資料は「性格」で分けて読む
同じ「厚労省の資料」でも、義務の中身を決めるものと、その理解や周知を助けるものがあります。次の表の「性格」は、各資料の位置づけをもとにした編集部の整理です。
| 資料 | 性格 | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| 労働施策総合推進法 33条・34条 | 措置義務(33条1項)と努力義務(34条2項など)の根拠 | 何が義務かを確かめる |
| 指針(告示51号) | 法33条4項に基づいて厚生労働大臣が定める、講ずべき措置の中身。4は「講じなければならない」、6・7は「望ましい」取組 | 自社の措置を点検する |
| 解釈Q&A | 厚生労働省 雇用機会均等課が示した解釈 | 指針の読み方に迷ったとき |
| 運用の通達 | 都道府県労働局長あての通達(雇均発0424第2号) | 行政の運用を確かめる |
| 企業マニュアル(令和8年度改訂版) | 委託事業の改訂検討委員会がまとめた手引き | 方針、対処の内容、相談の体制を考える |
| リーフレット・パンフレット | 法律と指針の要約 | 社内や経営層への説明 |
| ポスター・研修動画 | 周知・啓発の教材 | 従業員への周知と研修 |
| 業種別マニュアル | 業界で共通の方針と、場面ごとの対応例 | 自社の業種で起きやすい場面を探す |
措置の義務を定めているのは、上の2段(法律と指針)です。解釈Q&Aから下の資料は、その読み方や進め方を示します。措置の一覧と根拠は「カスハラ対策の義務化とは」に、指針の項ごとの性質は「告示51号を項ごとに読む」にまとめています。
資料ごとの所在と日付
法律と指針
改正法は2025年6月11日に公布され、カスハラ対策の措置義務は2026年10月1日に施行されました(令和8年政令第17号)。カスハラの指針(告示51号)と、求職者等へのセクシュアルハラスメントの指針(告示52号)は、2026年2月26日に公布され、10月1日から適用されています。
告示51号のPDFは、開くページによってファイルが違います。改正法のページから開くのは縦書き30頁のPDF、「職場におけるハラスメントの防止のために」から開くのは横書き13頁のPDFです。頁数が違うので、社内資料で指針を引用するときは、頁ではなく「4(1)イ」のような項目の番号で示すと、どちらのファイルでも探せます。
求職者等へのセクハラの指針の読み方は、「告示52号を項ごとに読む」にまとめました。
解釈Q&Aと通達
「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(解釈Q&A)は、2026年4月24日に公表され、9月30日に改訂されました。表紙には、9月30日に改訂し10月1日から適用することが書かれています。4月24日の版は問1〜問41、改訂版は問1〜問45です。
改訂で問の番号が変わりました。たとえば、顧客対応がない部署の労働者にも方針の周知や研修が要るかという問は、4月の版の問9から改訂版の問8へ移りました。4月の版の問6は、カスハラに当たるか否かを都道府県労働局が判断するかという問でした。改訂版ではハラスメント全般についての問に広げられ、全体に関する問45になっています(判断は行わないという答えは同じです)。
同じ日(2026年4月24日)には、都道府県労働局長あての通達「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第10章の規定等の運用について」(雇均発0424第2号)も出ています。
企業マニュアル
「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」は57頁のPDFです。令和3年度に作られたマニュアルを、法改正等の内容を反映して改訂したもので、はじめにの日付は令和8年9月、掲載ページの表記は「令和8年9月8日更新」です。令和8年度内に企業へのヒアリングを行い、再改訂する予定とされています(印字p.2)。
講じなければならない措置は4章(印字p.18〜)、望ましい取組は4.7(印字p.45〜)、自社の点検に使うチェックシートは付録1(印字p.51)にあります。マニュアルの使い方は「カスハラ対応マニュアルの作り方」、チェックシートと他の公的なチェックリストの使い分けは「カスハラ対策チェックリスト」で扱っています。
リーフレット・パンフレット・ポスター
国の資料で、施行に合わせて作られたものは次のとおりです。
- リーフレット:簡易版(2頁)と詳細版(6頁)。詳細版は、講ずべき措置を①〜⑩の番号で並べています(p.2)
- パンフレット:「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(令和8年7月更新)。カスハラを含む6つのハラスメントの措置を1冊で扱い、「対応例」(印字p.40〜)に、就業規則に委任規定を置いて別の規定を定める例と、リーフレット等で周知する例があります
- あかるい職場応援団のリーフレット:「カスタマーハラスメント対策リーフレット」(6頁、令和8年3月作成)
- 顧客等への理解を深める資料の案内:「消費者の心理や障害特性、認知症の症状に係る啓発資料のご案内」。消費者庁の啓発冊子や、障害特性・認知症の資料を紹介しています。指針が望ましい取組とする、顧客等への理解を深めるための資料配付や研修に使えます
ポスターは、厚生労働省のページに5つのデザインと、任意のイラストを追加できるものがあります。あかるい職場応援団の「NO!カスハラ」ポスターには、社内の相談窓口を案内するスペースがあります。周知物の作り方は「相談窓口を従業員に周知する方法」を、方針の例文の所在は「カスハラ基本方針の例文・テンプレート」を参照してください。
研修動画
あかるい職場応援団の「ハラスメント対策研修」に並んでいるのは、「NEW」と表示された4本(Ⅰ事業主向け、Ⅱ相談窓口担当者向け、Ⅲカスタマーハラスメント対策、Ⅳ就活ハラスメント対策)と、スーパーマーケット業界・宅配業の業種別の研修動画です。それぞれに研修資料のPDFが付いています。
このほか、改正法の特設ページにも、カスハラと求職者等へのセクハラの説明動画があり、カスハラの説明動画の資料には告示51号の抜粋が載っています。
研修で動画をどこまで使えるかは、「カスハラ研修は義務?」の「無料の公的教材の使いどころ」の節にまとめました。
業種別の資料
あかるい職場応援団の「業種別カスタマーハラスメント対策の取組支援」に、2つの業種のマニュアル、ポスター、研修動画があります。
- スーパーマーケット業編:2025年3月26日に報道発表。ポスターはコメントを書き込めるものと書き込めないものの2種類
- 宅配業編:令和7年度の取組支援で作られたマニュアルで、ステッカーもあります
- 業種別マニュアルの策定手順例(令和7年3月):業界団体が共通の方針を作るときの手順の例
医療と介護については、厚生労働省の別の部局が資料を出しています。医療は「医療従事者の勤務環境の改善について」に暴力・ハラスメント対策のeラーニング教材(全12本、1本20分程度)があり、令和8年度の業種別の取組支援は医療業が対象です(2026年9月14日の検討会資料 p.9)。介護は「介護現場におけるハラスメント対策」に、マニュアル、管理者向け・職員向けの研修の手引き(令和3年度改訂版)、事例集があります。
業種ごとの使い方は、「小売業のカスハラ対策」「医療機関のカスハラ対策」「介護施設のカスハラ対策」の各記事が詳しく扱います。
事例・裁判例・相談先・支援
- 企業事例:あかるい職場応援団の「カスタマーハラスメント防止対策企業事例」に7件。内容は「企業のカスハラ対策事例」で扱っています
- 裁判例:「裁判例を見てみよう」。カスハラに関わる判決は「カスハラ事例集」で扱っています
- 相談先:「相談窓口のご案内」。都道府県労働局の総合労働相談コーナーは、労働者と事業主のどちらからの相談も受け付けています
- 事案が起きたときの支援:厚生労働省の委託事業「ハラスメント事案解決のための伴走型支援」。ハラスメントの事案が生じた企業等に、専門家を無料で派遣します。支援は全4回で、オンラインでも受けられます。2026年7月6日に受付が始まり、申し込む前に条件への同意が必要です