カスハラ相談窓口の作り方|2026年10月からの受付・報告体制を店舗型と小規模型で決める

2026年10月1日から義務になったカスハラの相談窓口を、会社の中にどう作るかの手順です。店長を担当者にできる根拠、本社へ上げる基準と引き継ぐ項目、店長自身の相談先、周知物に載せる5項目、公的窓口の使い分けを、告示51号・厚労省の解釈Q&A・企業マニュアルの箇所つきで整理します。

更新
2026年10月5日
法令・資料の確認
2026年9月24日
読了の目安
13分
目次
  1. 相談窓口は2026年10月1日から義務。「定めた」と言えるのは何をしたときか
  2. カスハラの窓口は、パワハラ等の窓口と同じでなくてよい
  3. 相談の経路を4つの問いで決める
  4. 窓口の担当者が「適切に対応できる」状態にする
  5. 周知物に載せる5項目:誰に、何を、どの方法で
  6. 公的な相談窓口:従業員に案内する先と、会社が相談できる先
  7. 次の一手

2026年10月1日から、カスハラの相談に応じて適切に対応する体制の整備が事業主の義務になりました。具体的には、相談窓口をあらかじめ定めて従業員に周知し、窓口の担当者が適切に対応できるようにすることが求められます(労働施策総合推進法第33条第1項、令和8年厚生労働省告示第51号の4(2))。新しい部署や外部委託は必須ではありません。店長など現場の上司を相談の担当者に定めることも考えられ、パワハラ等の窓口と一体にする必要もないことを、厚生労働省の告示と解釈Q&A(問11)が示しています。

会社が決めることは次の4つです。

  1. 誰が最初に受けるか
  2. どこへ、どの基準で上げ、何を渡すか
  3. 店長自身や、店長に言いにくい人はどこへ相談するか
  4. 店長がその場にいない店舗・時間帯をどうするか

この記事では、この4つを「複数店舗の会社」と「小規模の会社」の2つの形で決め、決めた内容を従業員に知らせる周知物の項目まで整理します。10の措置の全体像と、相談を受けたあとの事実確認から再発防止までの流れは、それぞれ別の記事で扱います。

相談窓口は2026年10月1日から義務。「定めた」と言えるのは何をしたときか

根拠は法律と指針の2段です。改正後の労働施策総合推進法第33条第1項は、顧客等の言動で労働者の就業環境が害されないよう、事業主に「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。同条第2項は、相談したことや、会社の対応に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。

措置の中身を定めるのは告示51号(2026年10月1日から適用)です。相談窓口に関係するのは次の4つで、厚生労働省のリーフレットが並べる10の措置のうち③④⑨⑩にあたります。

  • 4(2)イ(義務):相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する(p.16)
  • 4(2)ロ(義務):窓口の担当者が、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにする(p.16〜17)
  • 4(5)イ(義務):相談者等のプライバシーを保護する措置を講じ、その旨を周知する(p.23〜24)
  • 4(5)ロ(義務):相談したこと等を理由に不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発する(p.24〜25)

告示が窓口を「あらかじめ定めていると認められる例」として挙げるのは、①相談に対応する担当者を定める、②相談に対応するための制度を設ける、③外部の機関に委託する、の3つです。担当者を決めることがこの例の一つにあたる点は、解釈Q&Aの問42も確認しています。外部委託は3つの例のうちの1つで、企業マニュアルも、窓口はカスハラのために必ずしも新たに設ける必要はないとしています(p.35)。社外の窓口と組み合わせる場合の選び方と費用は、外部委託の記事で扱います。

違反して厚生労働大臣の勧告に従わない場合は、その旨を公表されることがあります(法第42条第2項)。店舗に派遣スタッフがいる会社は、派遣先としても同じ措置を講じる必要があります(告示2(3)、p.4)。職場で働く他社の従業員や個人事業主などから相談があった場合は、4の措置も参考に対応に努めることが望ましいとされています(告示7、p.30)。

自社の窓口と周知がどこまで整っているかは、対応状況チェックで確かめられます(無料・登録不要)。

カスハラの窓口は、パワハラ等の窓口と同じでなくてよい

カスハラの窓口は、既存のハラスメント窓口と一体にしなくてよく、店長などの上司を担当者に定めることも考えられる、というのが厚生労働省の解釈です。解釈Q&Aの問11は、その理由を次のように説明しています(p.16)。

カスタマーハラスメントについては、他のハラスメントと異なり、事案が発生したその場ですぐに相談することや、現場の状況に精通している上司等に相談することが適切な場合もあることから、他のハラスメントの相談窓口と一体的なものとする必要はなく(略)相談に対応する担当者として、労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられる。

パワハラやセクハラについては、窓口を一体的に設置し一元的に相談に応じる体制が望ましいとされています(同じ問11、パワハラ防止指針の5)。カスハラも一体で設置してかまいません(問11の注)。ただ、本社の既存窓口の案内に「カスハラも」と書き足しただけでは、現場で最初に誰が聞くかが決まっていないことがあります。

令和5年度の実態調査では、顧客等からの著しい迷惑行為を受けた人(861人)のうち38.2%が「社内の上司に相談した」と答えています。厚労省の企業マニュアル(令和8年度改訂版)はこの数字を引き、上司や現場の管理監督者が担う役割は大きいとしています(p.35)。窓口を本社に置く会社でも、店長の役割を先に決めておくと実態に合います。

窓口と、方針や手順・研修を取りまとめる「対策推進チーム」は別の役割です(企業マニュアル p.33、東京都の指針 p.23)。この2つを分けておくと、店長に仕事が集まりすぎるのを防ぎやすくなります。

相談の経路を4つの問いで決める

告示では、「その場で店長に報告し対応を仰ぐこと」と「相談窓口を定めること」は別の措置です。前者は4(1)ロで定めて周知する「対処の内容」の例として、後者は4(2)の相談体制として挙がっています。店長を前者の報告先に置いたうえで、後者の担当者も兼ねるかを会社の規模と形で決めると整理しやすくなります。

問い1:誰が最初に受けるか

最初に受けるのは、多くの場合、現場の店長などの管理監督者です。告示4(1)ロは、その場で管理監督者に報告があった場合や管理監督者が現認した場合に「直ちに適切な対応を行うことが必要な場合もあることを踏まえ」て対処の内容を定めるよう求めています(p.14、義務)。対処の内容の例として、管理監督者へ直ちに報告して指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、現場で対応が難しければ本社・本部へ情報共有して指示を仰ぐ、などが挙がっています(p.14〜15。限定列挙ではありません)。その場での対処の詳細は、初期対応の記事で扱います。

相談窓口の担当者には、上司・現場の管理監督者、小規模な会社なら経営者等が考えられます(企業マニュアル p.35)。理由は、日頃から現場の状況に詳しく、トラブルがあれば急行しやすいことです。同じ頁は、既存のハラスメント窓口や社内ヘルプラインを使うことも、外部に委託することも可能だとしています。

東京都の指針は、規模別の参考例を示しています(p.23〜24)。都の参考例で、国の基準ではありません。

  • 従業員100人超:相談対応者は社内のハラスメント相談窓口や外部委託など、現場監督者は店舗のマネージャーなどの上司、推進は本社
  • 6〜100人:店舗のマネージャーなどの上司が相談対応者と現場監督者を兼ね、推進は経営者や人事部門責任者などの本部
  • 5人以下:経営者などが推進・相談対応者・現場監督者を兼ねる可能性がある

企業マニュアルは、苦情対応と切り離さず、その延長でカスハラの相談に対応できるようにすると、既存の体制を活用でき負担が少ないとしています(p.30)。

問い2:どこへ、どの基準で上げ、何を渡すか

企業マニュアルは、本社・本部へ報告が必要な事項と手続を、あらかじめ決めておくとよいとしています(p.30)。例として示される流れは、相談を受けた店長などの現場監督者が、状況に応じてエリアマネージャーや本社・本部の相談窓口へ情報共有し、指示を仰ぐ形です。

本社へ上げる判断基準の例は、顧客等とのやり取りで訴訟手続が必要になる場合と、警察や自治体など社外の組織と連携が必要になる場合です(p.31)。相談先の例は次のとおりです。

  • 損害賠償を請求されたとき:本社の相談窓口と連携し、法務部門に相談する
  • 刑法犯(強要罪等)にあたる可能性があるとき:本社の相談窓口と連携し、法務部門・人事労務部門とともに警察や弁護士等に相談・通報する

本社へ引き継ぐときに渡す内容として、企業マニュアルは次の6項目を例示しています(p.31。「等」がつくので、これで全部ではありません)。

  1. 対応日時、場所
  2. 対応した従業員
  3. 顧客等からの要望の内容
  4. 顧客等の情報
  5. 現場監督者の指示
  6. 対応結果

あわせて、誰がいつ・どこで・どう対応したかを時系列で整理しておくと、引き継いだ担当者が動きやすくなるとしています。現場の従業員から店長への報告も、できるだけ時系列で整理することが望まれています(p.25)。上げたあとの事実確認や被害者への配慮、再発防止は、相談後の対応の流れを扱う記事に譲ります。

問い3:店長自身や、店長に言いにくい人はどこへ相談するか

店長を担当者にするなら、店長自身が相談できる窓口も決めます。企業マニュアルは、上司や現場の管理監督者を担当者に定める場合、その管理監督者が相談できる窓口を別途設けることも考えられるとしています(p.35)。

店長に言いにくい従業員のための経路については、一次資料に直接の記載はありません。ここからは編集部の提案です。告示4(2)ロは、被害者が萎縮するなどして相談をためらう例もあることも踏まえ、広く相談に対応するよう求めています(p.16〜17)。そのため、方針には「一次は店長、二次は本社の人事部(または既存のハラスメント窓口)」のように両方を相談窓口として書き、どちらに相談してもよいと示す形を勧めます。

こう書くと、本社が窓口なのか店長が窓口なのかという迷いも解けます。窓口を定めた例の一つは「相談に対応する担当者を定めること」です(問42)。店長と本社の担当者をそれぞれ担当者として書けば、どちらも窓口として示せます。

問い4:店長がいない店舗・時間帯をどうするか

従業員が1人の店舗でも、対処の内容は定めます。解釈Q&Aの問14は、十分な説明のあとも要求が続けば一定時間で退店を求める・電話を切る、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、現場で対応が難しければ本社・本部へ情報共有して指示を仰ぐ、といった内容を定めておくことを例に挙げています(p.19)。1人の店舗でも、相談があり事実が確認できれば、担当者の変更や配置転換、メンタルヘルス不調への相談対応など、被害者への配慮の措置が必要です(同)。

小規模な店舗や時間帯によって店長がその場にいない場合に備え、従業員だけでも対応できるよう基本的な対応方法を周知しておくことが必要だとされています(企業マニュアル p.26)。編集部としては、店長不在の時間帯の連絡先(エリアマネージャーや本社)も周知物に書いておくことを勧めます。

4つの問いの答えの例

役割 複数店舗の会社 小規模の会社
その場の報告先 店長・エリアマネージャー 経営者(店長がいれば店長)
相談窓口の担当者 店長(一次)と本社の人事等(二次) 経営者(規模により別に窓口)
本社・経営者へ上げる先 本社の相談窓口から法務・人事、警察・弁護士へ 経営者が外部機関と連携
店長自身の相談先 本社の相談窓口 経営者

企業マニュアル p.30〜35、東京都の指針 p.23〜24 をもとに編集部が作成。店長(一次)と本社(二次)の二段の窓口と、店長自身の相談先は編集部の提案です(小規模の会社の「経営者」は、経営者等が相談窓口を担う企業マニュアル p.31 の例に合わせました)。

窓口の担当者が「適切に対応できる」状態にする

担当者は、カスハラが起きた場合だけでなく、起きるおそれがある場合や、カスハラにあたるか微妙な場合も広く相談を受けます(告示4(2)ロ、p.17、義務)。相談者の心身の状況や受け止め方にも配慮することが求められています。「これはカスハラか」を都道府県労働局が判断することはなく、事実関係を確認して必要な措置を講じるのは会社です(解釈Q&A 問45)。カスハラの定義と3つの要件は、別の記事で整理しています。

告示は、担当者が適切に対応できるようにしている例として3つを挙げています(p.17)。

  • 内容や状況に応じて、担当者と関係部門が連携できる仕組みにする
  • あらかじめ作った、留意点などを書いたマニュアルに基づいて対応する
  • 担当者に、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

企業マニュアルは、担当者の役割を、現場の状況把握、事実確認、顧客等への対応、相談者へのフォローとしています(p.36)。受けるときは話を傾聴し、詰問にならないよう注意します。軽微に見える事案にも深刻な問題が潜んでいることがあり、相談者に自殺をほのめかす言動があれば、人事部門と連携して直ちに産業医などの医療専門家につなぐことが求められます(同。東京都の指針 p.20〜21 も同旨)。研修は、相談窓口担当者や上司・現場監督者にも階層・役割別に行うことが重要とされています(p.34)。相談を受けるその場での聞き方・記録・言ってはいけない言葉は、ハラスメント相談対応マニュアルにまとめています。

周知物に載せる5項目:誰に、何を、どの方法で

誰に:雇用する従業員の全員

4(2)イの「労働者」は、正社員に限らず、パートタイム労働者や契約社員などを含む「事業主が雇用する労働者の全て」です(告示2(3)、p.3〜4)。方針と対処の内容についても、解釈Q&Aは、所属部署・雇用形態や社外の人と接する機会の有無を問わず、全ての労働者に周知する必要があるとしています(問8と更問)。顧客対応のない部署の従業員にも知らせます。

何を:5項目

  1. 相談窓口:誰が担当か、どう連絡するか。問い3の二段の形なら両方(告示4(2)イ、義務)
  2. その場の報告先と対処の内容:店長へ直ちに報告する、一人で対応しない、店長不在時の連絡先など(告示4(1)ロ、義務)
  3. プライバシーを守ること:窓口では相談者等のプライバシーを保護する措置を講じていること(告示4(5)イ、義務。社内報や社内ホームページへの掲載が例示)
  4. 相談しても不利益に扱われないこと:相談したこと、事実確認に協力したこと、都道府県労働局に相談したこと等を理由に、解雇その他の不利益な取扱いをされないこと(告示4(5)ロ、義務。就業規則等への規定、社内報等への記載が例示)
  5. 公的な相談先:総合労働相談コーナーなど(編集部の提案)

5は義務ではありません。4で労働局への相談が保護されることを知らせるなら、行き先も並べておくと従業員が実際に使えます。東京都の指針も、不利益な取扱いをしない旨は、相談窓口の設置の周知に併せて周知することが望ましいとしています(p.21)。

どの方法で:実際に使える形で

東京都の指針は、窓口は形式的なものではなく実際に利用できるものである必要があり、面談だけでなく電話やメールなど複数の方法で相談を受けられることが望ましいとしています(p.20)。都の条例が事業者に求める体制の整備は努力義務(第14条)で、対象は都内の事業者です。国の告示は、運用状況をアンケートや意見交換で把握し、必要な見直しを検討することに努めることが重要だとしています(6(2)、p.28)。窓口があるのに誰も使っていない、といった状態は、この見直しで見つけます。カスハラ以外も含めた窓口の案内の時期・方法・案内文の組み立ては相談窓口を従業員に周知する方法、アンケートの設計はハラスメント社内アンケートの作り方で扱っています。

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公的な相談窓口:従業員に案内する先と、会社が相談できる先

労働問題全般を扱う国の窓口は、各都道府県労働局と労働基準監督署にある総合労働相談コーナーです。労働者と事業主のどちらの相談も受けるので、従業員に案内する先にも、会社が体制づくりを相談する先にもなります。都道府県が独自に窓口を置いている地域もあり、下の表では東京都と埼玉県を例に挙げます。

窓口 誰が使えるか 扱わないこと
総合労働相談コーナー 労働者・事業主のどちらも。予約不要・無料 個々の言動がカスハラかの判断(Q&A問45)
東京都カスタマーハラスメント総合相談窓口 都内の事業者・就業者・顧客等。無料 個別事案の法的判断、交渉
埼玉県カスタマーハラスメント総合相談窓口 県内の事業者・事業者団体・就業者・顧客。無料 個別事案の判断、トラブル解決の交渉

連絡先と受付時間は、各ページで最新のものを確かめてください。総合労働相談コーナーは、労働基準法等の違反の疑いがあれば、監督署等の担当部署へ取り次ぎます。厚生労働省の相談窓口のご案内には、ほかに労働委員会、法テラス、みんなの人権110番、こころの耳が載っています。

次の一手

  1. 4つの問いの答えを、方針の「相談窓口」の節に書き込む
  2. 周知物を1枚作り、5項目を載せて、雇用する従業員の全員に配る
  3. 窓口の担当者に、受ける範囲と本社へ上げる基準を伝える(マニュアルと研修は別の記事で扱います)

窓口以外の措置も含めた自社の状況は、対応状況チェックで確かめられます。無料・登録不要で、回答は送信されません。相談を受ける仕組みそのものを整えるなら、ハラスメント対策室でできることを見るから確かめてください。

出典

方針・周知・研修・相談窓口・記録をひとつで

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