告示51号(カスハラ防止指針)を項ごとに読む|義務・努力義務・望ましい取組の見分け方と、パワハラ指針との違い

令和8年厚生労働省告示第51号(カスハラ防止指針)を、1〜7の項ごとに「何を定め、どの文言で、どの性質か」で整理します。措置を義務づけているのは4だけで、3と5は努力義務、6と7は望ましい取組です。解釈事項(2026年4月24日、9月30日改訂)の問番号と、パワハラ指針との違いも項ごとに対応づけます。

更新
2026年10月5日
法令・資料の確認
2026年9月28日
読了の目安
16分
目次
  1. 告示51号の位置づけ:根拠条文と日付
  2. 告示51号の地図:1〜7の項と、それぞれの性質
  3. 文言で性質を読み分ける
  4. 2 カスハラの内容:実務で引く箇所
  5. 3 事業主等の責務:法第34条の努力義務
  6. 4 講ずべき措置:柱書の留意と、(1)〜(5)の読みどころ
  7. 5 他の事業主からの協力の求め:努力義務と望ましい取組が混在
  8. 6・7 望ましい取組
  9. パワハラ指針(告示5号)との違い
  10. よくある質問
  11. 次の一手

告示51号は、厚生労働省が定めたカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)の防止指針です。正式名は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」で、労働施策総合推進法第33条第4項に基づき2026年2月26日に告示され、同年10月1日から適用されています。告示は1〜7の項でできており、事業主に措置を義務づけているのは4(講ずべき措置)だけで、2は定義、3と5は努力義務、6と7は望ましい取組です。

この記事は、告示の本文(厚生労働省PDF、30頁)を手元で読むときの道しるべです。項ごとに「何を定め、どの文言で、どの性質か」を示し、厚生労働省の解釈資料の問番号と、パワハラ指針との違いを対応づけます。10月1日から会社に義務づけられた措置を順に知りたい方は、カスハラ対策の義務化と10の措置から読むほうが早く進みます。

2026年9月28日時点で確認した内容です。改正法は10月1日に施行され、告示も同日から適用されています。条番号は施行後のものです。本文中の頁は、告示PDFの下部に印字された頁番号です。

告示51号の位置づけ:根拠条文と日付

告示51号は、法律・政令・指針の3つが組み合わさって効力を持ちます。

  • 法律:改正後の労働施策総合推進法第33条は、第1項で事業主の措置義務、第2項で相談等を理由とする不利益取扱いの禁止、第3項で他の事業主から協力を求められたときの努力義務を定めます。第4項が、厚生労働大臣がこれらの措置について指針を定めると規定しています(e-Gov法令検索)
  • 指針の手続:第33条第5項は、第31条第4項(労働政策審議会の意見を聴く)と第5項(定めたら公表する)を指針に準用しています。告示文も、第33条第4項に基づいて定め、準用する第31条第5項に基づいて告示すると書いています(告示 p.1)
  • 日付:告示日は2026年2月26日、適用日は改正法の施行日である2026年10月1日です(告示 p.1)。施行日は政令(令和8年政令第17号)が定めています(厚生労働省掲載PDF)

告示そのものに罰則の定めはありません。行政の関与は法律の側にあり、第42条が助言・指導・勧告と、第33条第1項・第2項などに違反して勧告に従わないときの公表を、第45条第1項と第51条が報告の求めと、報告をしない・虚偽の報告をしたときの20万円以下の過料を定めています。詳しくは義務化の記事の「対応しないとどうなるか」にまとめています。

厚生労働省の改正ページには、告示51号と並んで、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの指針(告示第52号)と、改正法の施行に伴い関係告示を整備する告示(告示第53号)が掲載されています(厚生労働省 改正ページ)。

告示51号の地図:1〜7の項と、それぞれの性質

告示の全体を1つの表にまとめると次のとおりです。「性質」は、告示がその項で使っている文言から分けています。

項(頁) 定めていること 性質(文言)
1 はじめに(p.1〜2) 法第33条第1〜3項の措置について、同条第4項に基づき定めた指針であること 説明
2 カスハラの内容(p.2〜10) 3つの要素、「職場」「労働者」「顧客等」「社会通念上許容される範囲を超えた」「就業環境が害される」の意味と典型例 説明(定義)
3 事業主等の責務(p.10〜11) 事業主・役員・労働者の責務(法第34条第2〜4項) 努力義務(「努めなければならない」)
4 柱書(p.11〜12) 措置を講じる義務と、消費者の権利・障害者差別解消法・業法への留意 義務(「講じなければならない」)と留意事項
4(1)〜(5)(p.12〜25) 方針の明確化と周知、相談体制、事後の対応、抑止のための措置、プライバシー保護と不利益取扱い(10の措置) 義務。「認められる例」「考えられる」は例示
5 他の事業主への協力(p.25〜26) 他の事業主から事実確認等への協力を求められたとき(法第33条第3項) 努力義務。一部は望ましい
6 望ましい取組(p.26〜29) 原因や背景の解消、運用状況の把握と見直し、業種・業態に応じた取組、自社の労働者が他社の労働者にカスハラをしない旨の方針 望ましい取組
7 労働者以外の者への言動(p.29〜30) 他社の労働者や個人事業主等に対する顧客等の言動 望ましい取組

4の措置の一覧(リーフレットの①〜⑩)と、措置ごとに残るものの例は、義務化の記事の表とチェックリストにあるので、この記事では繰り返さず、項ごとの「読みどころ」に絞ります。

文言で性質を読み分ける

告示は、同じ項の中でも文言で強さを変えています。社内規程や顧問先への説明で取り違えやすいのは次の7つです。

  • 「講じなければならない」:義務。4の柱書と4(1)〜(5)の各柱書、4(5)の「併せて次の措置を講じなければならない」がこれに当たります。2(3)の派遣先についての「不利益な取扱いを行ってはならない」は、法第33条第2項などの禁止を確認したものです
  • 「努めなければならない」:努力義務。3(法第34条)と5(法第33条第3項)
  • 「望ましい」「望ましくない」:望ましい取組。6と7のほか、5の中にも混じっています
  • 「〜と認められる例」:措置を講じていると認められる方法の例です。告示は、この方法に限るとは書いていません
  • 「〜も考えられる」:取りうる選択肢の提示です。たとえば4(2)の「相談に対応する担当者として、労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられる」
  • 「限定列挙ではない」:2(5)の典型例と、4(1)ロの対処の内容の例について、明記されています
  • 「留意する必要がある」「留意することが必要である」:措置を講じるときの考慮事項です。4の柱書(消費者法制・障害者差別解消法・業法)や2(5)(事業主や労働者側の不適切な対応が原因や背景になっている場合)に出てきます

措置を果たしたかどうかは、例と同じ形かではなく、措置の本文(各柱書とイ・ロ・ハ)を満たしているかで確かめます。解釈資料も、業界団体のマニュアルを配るだけでは4(1)イ・ロの措置を果たしたことにならず、自社の実情に応じて調整した方針や対処の内容を周知すれば果たしたことになる、と説明しています(解釈事項 問20の更問、p.26)。

2 カスハラの内容:実務で引く箇所

2は定義の項です。定義そのものの解説はカスハラとはに、正当なクレームとの区別はクレームとの違いにまとめています。告示を引くときに押さえる箇所は次のとおりです。

  • 2(1) 3つの要素(p.2〜3):①顧客等の言動で、②業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの。3つを全て満たすものをいいます。社会通念上許容される範囲の苦情は「正当な申入れ」で当たりません。障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を求める意思を表明すること自体も当たりません。電話やSNS等のインターネット上の言動も含まれます
  • 2(2) 職場(p.3):取引先の事務所や顧客の自宅など、業務を遂行する場所を含みます(解釈事項 問3、p.7)
  • 2(3) 労働者(p.3〜4):パートタイム労働者・契約社員等を含む雇用する労働者の全て。派遣先も、労働者派遣法第47条の4により、派遣労働者について3(1)の配慮と4の措置を講じる必要があります
  • 2(4) 顧客等(p.4〜5):潜在的な顧客も含まれ(解釈事項 問1、p.5)、例示には施設の近隣住民も挙がります(告示 p.5)
  • 2(5) 社会通念上許容される範囲を超えた言動(p.5〜9):「言動の内容」と「手段や態様」に着目し、一方だけが範囲を超える場合でも該当しうるとしています。典型例として、内容のイ①〜④と、手段や態様のロ①〜⑤が挙がります(解釈事項 問4・問5、p.8〜9)
  • 2(6) 就業環境が害される(p.9〜10):「平均的な労働者の感じ方」を基準とし、強い苦痛を与える態様なら1回でも該当しうるとしています

事実関係を確認し、必要な措置を講じるのは事業主です。都道府県労働局は、個々の事案がハラスメントに当たるかを判断しないと解釈資料は説明しています(問45、p.54)。

3 事業主等の責務:法第34条の努力義務

3は、法第34条の責務を告示の中で確認する項です(p.10〜11)。

  • 3(1) 事業主:カスハラ問題について雇用する労働者の関心と理解を深め、自社の労働者が他の事業主の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をし、国の広報・啓発に協力するよう努める(法第34条第2項)。事業主(法人の場合はその役員)自身も、関心と理解を深め、他の事業主の労働者に対する言動に注意を払うよう努める(同条第3項)
  • 3(2) 労働者:関心と理解を深め、他の事業主の労働者に対する言動に注意を払い、4の措置に協力するよう努める(同条第4項)

3の責務は、自社の労働者が取引先などの労働者に対して行為者にならないことにも向けたものです。なお、顧客等自身の責務(法第34条第5項)は法律に定めがあり、告示の3は事業主と労働者の責務を扱っています。研修が法令のどこに出てくるかの整理はカスハラ研修は義務かにあります。

4 講ずべき措置:柱書の留意と、(1)〜(5)の読みどころ

4の柱書:3つの留意事項(p.11〜12)

柱書は、事業主が次の措置を「講じなければならない」と定めたうえで、次の3点に留意するよう求めています。

  • 消費者法制が定める消費者の権利
  • 障害者差別解消法の不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供義務。主務大臣の対応指針や内閣府の事例なども参考に、顧客等との建設的対話を重ねるなど、事案に応じて対応する
  • 業法等でサービス提供の義務がある場合や、サービスが途絶えると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合

業法でサービス提供の義務を負う事業では、4(1)ロの対処の内容や4(4)の方針(販売・提供をしない、出入り禁止など)を書くときに、この柱書と照らし合わせることになります。

4(1) 方針等の明確化と周知・啓発(p.12〜15)

  • イとロは別の措置です。イは「毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針」を明確化して、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。ロは、カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を周知することです
  • ロの対処の内容は、現場で管理監督者等が直ちに対応すべき場合があることを踏まえて定めます。例(すぐに報告して指示を仰ぐ、一人で対応させない、録音・録画、時間を区切って退店を求める、警察へ通報、本社への共有、弁護士への相談)は「限定列挙ではなく」、実態に応じて定めるとされています
  • 方針を顧客等に周知することは「効果的と考えられる」とされる取組で、義務ではありません(解釈事項 問7、p.11)。一方、労働者への周知は、顧客対応のない部署を含め全ての労働者に必要です(問8と更問、p.12〜13)
  • 録音・録画は個人情報保護法等を守って行うと告示に書かれています。利用目的の特定と通知・公表については解釈事項 問9・問10(p.14〜15)が扱っています
  • 柱書は、原因や背景に商品・サービス・接客の問題や顧客等とのコミュニケーション不足もあるとして、それらを幅広く解消する取組が防止の効果を高める上で重要だと留意を求めています(原因や背景の解消の取組の例は問6、p.10)

方針の書き方は基本方針の例文、対処の内容を文書にする方法は対応マニュアルの作り方にあります。

4(2) 相談体制の整備(p.16〜17)

  • 柱書に「相談に対応する担当者として、労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられる」とあり、イには他のハラスメントの相談窓口と「一体的に設置をすることも考えられる」とあります。解釈資料は、カスハラはその場ですぐ相談することや現場に精通した上司に相談することが適切な場合もあるとして、他の窓口と一体でなくてよいとしています(問11、p.16)
  • 窓口を定めていると認められる例は、担当者を定める・制度を設ける・外部の機関に委託するの3つです。担当者と窓口の関係は解釈事項 問42(p.51)が説明しています
  • ロは、カスハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当するか微妙な場合も広く相談に対応するよう求めています

窓口の組み方はカスハラ相談窓口の作り方、類型横断の整理は相談窓口の設置義務、委託の範囲は相談窓口の外部委託で扱っています。

4(3) 事後の迅速かつ適切な対応(p.17〜22)

  • イ 事実関係の確認:行為者が他社の労働者や他の事業主である場合は、必要に応じてその事業主に協力を求めることも含まれます。認められる例は、管理監督者等がその場で確認して対応すること、相談窓口の担当者等が相談者から確認し、必要に応じて周囲の労働者から聴いたり録音・録画等を確かめたりすることです。行為者からの聴取は「必要かつ可能な場合には」とされ、連絡が取れない行為者にまで確認する必要はないと解釈資料は説明しています(問12、p.17)。業務と関係のない私的な場面での言動について、行為者の勤務先へ協力を求める必要はありません(問13、p.18)
  • 確認が困難な場合の例に、法第37条の調停の申請など中立な第三者機関へ委ねることが挙がります。この調停で出頭を求める参考人には、顧客等も含まれます(問43、p.52)
  • ロ 被害者への配慮:事実が確認できた場合に、速やかに行います。例は、管理監督者等が代わりに対応する、引き離す、対応担当者を変える・複数人で対応する、配置転換、メンタルヘルス不調への相談対応などです。従業員1名の店舗でも、確認できた場合は配慮の措置が必要とされています(問14、p.19)
  • ハ 再発防止:方針の再周知に加え、必要な場合は原因や背景となった商品・サービス・接客等の問題の改善を図ります。事案の記録と関係部門への共有は「考えられる」とされる取組です。事実が確認できなかった場合にも同様の措置を講じると明記されています(p.21)

流れとして組み立てたものはカスハラ対応フローにあります。

4(4) 抑止のための措置(p.22〜23)

法第33条第1項が「抑止のための措置」を条文に書き込んでいることに対応する項です。過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、その対処を行える体制を整備することが義務です。

  • 対処の例(警察への通報、警告文、法令の制限内での販売・提供の停止、出入り禁止、民事保全法に基づく仮処分命令の申立て)は例示です。業法等の定めなど業種・業態で必要な対応が異なることに留意しつつ、状況に応じた方針を定めることが効果的とされています
  • 方針に出入り禁止を定めても、悪質な事案に必ず出入り禁止を講じる必要はありません。整備した体制の下で、方針に基づき講じるかを判断します(問15、p.20)
  • この方針は4(1)ロの対処の内容と別の文書にしなくてよいとされています(問16、p.21)
  • 改正法は事業主に新たな法的権利や権限を設けるものではない、と解釈資料は説明しています(問17、p.22)

4(5) 併せて講ずべき措置(p.23〜25)

  • イ プライバシーの保護:相談者等の情報を守る措置を講じ、その旨を労働者に周知します。プライバシーには性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報も含まれます
  • ロ 不利益取扱いをされない旨の周知:法第33条第2項・第36条第2項・第37条第2項を踏まえ、相談したこと、事実確認に協力したこと、労働局への相談・援助の求め・調停の申請、調停への出頭を理由に不利益な取扱いをされない旨を定め、周知・啓発します。認められる例の1つが、就業規則その他の服務規律を定めた文書への規定です

5 他の事業主からの協力の求め:努力義務と望ましい取組が混在

5は法第33条第3項に対応する項で、自社の労働者や役員が行為者の側になった場面を扱います(p.25〜26)。

  • 他の事業主から事実確認等への協力を求められたら、応じるよう努める(努力義務)
  • 協力を求められたことを理由に、契約を解除するなどの不利益な取扱いをすることは「望ましくない」
  • 協力して事実確認を行うとき、協力した労働者に不利益な取扱いをしない旨を定めて周知すること、事実が確認できた場合に就業規則等の規定に基づき行為者に懲戒その他の措置を講ずることは「望ましい」

既存の信用失墜行為や服務規律違反の懲戒規定で対応できるなら、カスハラ独自の規定を新たに設ける必要はないとされています(解釈事項 問18、p.23)。協力を求めた相手が応じない場合は、都道府県労働局に相談でき、労働局は協力に応じるよう助言する等の対応をします(問19、p.24)。

6・7 望ましい取組

6(p.26〜29)は、4の措置に加えて行うことが望ましい取組です。

  • 6(1):原因や背景の解消。接客・商品・苦情対応の研修など対応力を高める取組と、消費者の心理や障害特性を学ぶなど顧客等への理解を深める取組。正当な申入れを踏まえて真摯に業務を行う意識も重要だと留意を求めています
  • 6(2):労働者や労働組合等の参画を得たアンケート・意見交換による運用状況の把握と見直し。衛生委員会の活用も例に挙がります
  • 6(3):業種・業態に応じた取組。同業の複数の事業主が一体で取り組むことも考えられるとしています(業界共同のマニュアルと4(1)ロの関係は、解釈事項 問20(p.25)と前述の更問)
  • 6(4):自社の労働者が取引先に対してカスハラの言動を行う場合もあることから、4(1)イの方針を示す際に、他の事業主の労働者に対してカスハラを行ってはならない旨の方針を併せて示すこと

7(p.29〜30)は、他社の労働者や個人事業主等、自社が雇用していない人に対する顧客等の言動についても同様の方針を示し、相談があれば4の措置も参考に対応するよう努めることを、望ましい取組としています。

パワハラ指針(告示5号)との違い

告示51号は、パワハラ指針(令和2年厚生労働省告示第5号)と同じ骨組み(定義・責務・措置・望ましい取組)を持っています。パワハラの相談窓口や規程を流用してカスハラに対応する場合は、次の違いを確かめてください。パワハラ指針は2026年10月1日適用版と比べています。

論点 パワハラ指針 告示51号(カスハラ)
方針の中身 「行ってはならない旨」の方針と、行為者に厳正に対処する旨の方針(4(1)イ・ロ) 「毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨」の方針(4(1)イ)と、あらかじめ定めた対処の内容の周知(4(1)ロ)
就業規則等への規定 厳正に対処する旨の方針と対処の内容を就業規則その他の服務規律を定めた文書に規定する(4(1)ロ) 4(1)に規定先の定めはない。就業規則等は4(5)ロの例と5の懲戒(望ましい)に出てくる
相談窓口 他のハラスメントと一元的に相談に応じる体制が「望ましい」(5(1)) 一体的な設置も、上司を担当者にすることも「考えられる」(4(2))。一体でなくてよい(問11)
事実確認の相手 相談者と行為者の双方から確認する例(4(3)イ①) 相談者、周囲、録音・録画等。行為者からは「必要かつ可能な場合には」(4(3)イ②)。他の事業主への協力依頼を含む
行為者への措置 行為者に対する措置を適正に行う(4(3)ハ、義務の措置。懲戒その他の措置は認められる例) 4には行為者への措置の項がない。自社の労働者が他社で行為者になった場合の懲戒等は5(2)で「望ましい」
抑止のための措置 対応する項はない 特に悪質なものへの対処の方針と体制(4(4))
プライバシー保護の対象 「相談者・行為者等」(4(4)イ) 「相談者等」(4(5)イ)
措置の柱書の留意 対応する記載はない 消費者法制、障害者差別解消法、業法・サービス途絶への留意(4柱書)

2の定義の書き方も違います。パワハラ指針は言動の類型ごとに「該当すると考えられる例」と「該当しないと考えられる例」を並べています(2(7))。告示51号は、社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型例を「内容」と「手段や態様」に分けて挙げ、正当な申入れや障害者の申出が当たらないことを2(1)に書いています。

よくある質問

告示51号に違反すると罰則はありますか

告示そのものに罰則の定めはありません。法律の側では、厚生労働大臣が事業主に助言・指導・勧告をでき、第33条第1項・第2項などに違反して勧告に従わないときは公表されることがあります(法第42条)。20万円以下の過料は、第45条第1項の報告を求められて報告しない、または虚偽の報告をした場合の定めです(法第51条)。

「認められる例」と違う方法で措置を講じてもよいですか

告示は「認められる例」をこの方法に限るとは書いておらず、4(1)ロの対処の内容の例は「限定列挙ではなく」、実態に応じて定めるとしています。自社の方法が、措置の本文が求める状態(たとえば「相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること」)を満たしているかで確かめてください。例に挙がった形をとっても、業界団体のマニュアルを配るだけのように本文を満たさない場合があります(解釈事項 問20の更問、p.26)。

告示52号とは何が違いますか

告示52号は、求職者等(求人に応募する人や、インターンシップなど採用に関する活動の参加者、教育実習等の実習生)に対する自社の労働者のセクシュアルハラスメントを防ぐ指針で、根拠は男女雇用機会均等法第13条第3項です(e-Gov法令検索)。告示51号とは根拠の法律も守る相手も違い、同じ2026年10月1日から適用されています(厚生労働省リーフレット p.1)。採用担当者がやることは就活セクハラ対策の義務化にまとめています。

次の一手

告示を項ごとに読んだら、自社(顧問先)の現状を4の措置に当てはめてみてください。無料の対応状況チェックは登録不要で、約2分で回答でき、回答は送信されません。措置ごとの点検項目はカスハラ対策チェックリストで確かめられます。

顧問先でハラスメント対策室を使うときの形 (社外の相談先としての登録、相談担当者としての参加) は「社会保険労務士の方へ」にまとめています。

出典

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