2026年10月1日から、規模を問わずすべての事業主に、告示51号が定めるカスハラ対策の措置が義務になりました。点検には、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」の付録にあるチェックシートが使えます。ただし、このシートでは義務の項目と例示の項目が同じ「□」で並んでいます。この記事の点検表は、そのシートの項目に告示の箇所と「義務か、例示か」の区別を付け、シートにない判定条件を〔追加〕として足したものです。
☐が付かなかった項目のうち、先に埋めるのは【義務】です。【例示】は方法の一つなので、同じことを別の方法で果たしていれば足ります。措置そのものの説明はカスハラ対策の義務化の記事にまとめています。
この点検表の読み方
各項目の区別は、告示と法律の書き方だけで決めています。
| 区別 | 告示・法律での書かれ方 | ☐が付かないとき |
|---|---|---|
| 【義務】 | 告示4の措置の本文(「講じなければならない」措置の中身)と、解釈事項が「必要がある」とする点 | 措置の中身が欠けています。先に埋めます |
| 【例示】 | 「認められる例」「対処の内容の例」、または「考えられる」とされるもの | 方法の一つです。義務の本文を別の方法で果たしているかを確かめます |
| 【留意】 | 告示4の柱書が、措置を講じる際に「留意する必要がある」とする点 | 対処の内容をこの点から見直します |
| 【努力義務】 | 法律が「努めなければならない」とする点 | 法律が努めるべきこととして定めています。できる範囲で進めます |
| 【望ましい】 | 告示6・7の「望ましい取組」 | 義務の本文が埋まってから検討します |
〔追加〕は、厚生労働省のチェックシート(企業のチェックシート21項目)にない項目です。告示の頁は告示51号PDFの下部の頁番号、「解釈事項」は厚生労働省のハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について(2026年4月24日、9月30日改訂)で、頁は資料下部の頁番号です。丸数字はリーフレット(詳細版)の措置の番号に合わせました。
1. 方針と対処の内容(措置①②)
- 【義務】カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確にしている(告示4(1)イ、p.12〜13)
- 厚労省のシートは「組織のトップが」明確化しているかを問います。トップメッセージとして発信することは、告示では「考えられる」とされる方法です(p.13)
- 【義務】その方針を、管理監督者を含む労働者に周知・啓発している(4(1)イ、p.12〜13)
- 〔追加〕【義務】周知の対象が、顧客対応のない部署や、パート・契約社員などを含む雇用する労働者の全てになっている(告示2(3)、p.3〜4/解釈事項 問8、p.12)
- 派遣労働者を受け入れている場合は、派遣先も、派遣労働者について自社の労働者と同様に措置を講じます(告示2(3)、p.4)
- 【義務】カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知している(4(1)ロ、p.13〜15)
- 〔追加〕【義務】対処の内容も、社外の人と接する機会があるかどうかを問わず、全ての労働者に周知している(解釈事項 問8の更問、p.13)
- 〔追加〕【義務】対処の内容を、その場で管理監督者等が直ちに対応する必要がある場合もあることを踏まえて定めている(4(1)ロ、p.14)
- 〔追加〕【義務】対処の内容が自社の労働者の状況等の実態に合っている。1人で対応する店舗や時間帯があるなら、その場合の対処も定めている(4(1)ロ、p.14/解釈事項 問14、p.19)
- 1人の店舗の例として、解釈事項は、十分に説明したうえで一定の時間の経過をもって退店を求める・電話を切る、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、本社・本部等へ情報共有して指示を仰ぐ、などを定めておくことを挙げています
- 〔追加〕【義務】業界団体のマニュアルを配っただけになっていない。参考にする場合は、自社の実情に応じて調整したうえで方針と対処の内容を定め、周知している(解釈事項 問20の更問、p.26)
- 同じ業種の複数の事業主と一体でマニュアルを策定し、策定に参画した事業主が、自社の事業場でそのマニュアルに従って運用するものとして自社の労働者に周知した場合は、4(1)ロの措置を果たしたことになるとされています(問20、p.25)
- 【例示】対処の内容の例(管理監督者等へ直ちに報告して指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、録音・録画、一定の時間の経過をもって退店を求める・電話を切る、警察への通報、本社・本部等への情報共有、弁護士への相談)から、自社に要るものを選んで定めている(4(1)ロ、p.14〜15。限定列挙ではありません)
- 【例示】その事業所で起きやすいカスハラの例や、原因・背景になりうる商品・サービス・接客等の問題も併せて周知している(4(1)ロ、p.14)
- 〔追加〕【留意】対処の内容が、消費者法制の定める消費者の権利、障害者差別解消法の不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供義務、業法等によるサービス提供の義務に留意したものになっている(告示4柱書、p.11〜12)
2. 相談窓口(措置③④)
- 【義務】相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知している(4(2)イ、p.16)
- 定め方の例は、担当者を定める、相談に対応する制度を設ける、外部の機関に委託する、の3つです(例①〜③)。担当者に労働者の上司である管理監督者等を定めることも考えられ、パワハラ等の窓口と一体にする必要はありません(4(2)、p.16/解釈事項 問11、p.16)。作り方はカスハラ相談窓口の作り方で扱っています
- 【義務】窓口の担当者が、相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにしている(4(2)ロ、p.16〜17)
- 【義務】カスハラが現実に起きた場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、該当するか微妙な場合も、広く相談に対応する扱いになっている(4(2)ロ、p.17)
- 【例示】担当者と関係部門が連携できる仕組みがある(4(2)ロ 例①、p.17)
- 【例示】担当者が、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づいて対応する(4(2)ロ 例②、p.17)
- 〔追加〕【例示】担当者に、相談を受けた場合の対応についての研修を行っている(4(2)ロ 例③、p.17)
3. 相談があったあと(措置⑤⑥⑦)
- 【義務】事実関係を迅速かつ正確に確認する手順(誰が、何を確認するか)が決まっている(4(3)イ、p.18)
- 【例示】必要に応じて、周囲の労働者から聴いたり、録音・録画等の客観的な証拠を確かめたりできる(4(3)イ 例②、p.18)
- 行為者が立ち去って連絡先も分からない場合、行為者から事実関係を確認する必要まではないとされています(解釈事項 問12、p.17)
- 録音・録画を事実確認に使う場合は、個人情報保護法に基づき、その利用目的をできる限り特定して通知または公表しておく必要があります(解釈事項 問9、p.14)
- 【義務】カスハラの事実が確認できた場合に、速やかに被害者への配慮の措置をとれる(4(3)ロ、p.19)
- 1人の店舗でも、事実が確認できた場合は、担当者の変更や配置転換、メンタルヘルス不調への相談対応等の配慮の措置が必要とされています(解釈事項 問14、p.19)
- 【例示】配慮の方法として、管理監督者等が代わって対応する、被害者と行為者を引き離す、担当者を変える・複数人で対応する、配置転換、メンタルヘルス不調への相談対応などを取れる(4(3)ロ 例①②、p.19)
- 【義務】方針を改めて周知・啓発し、必要な場合には原因や背景となった商品・サービス・接客等の問題の改善を図るなど、再発防止の措置を講じる(4(3)ハ、p.20)
- 〔追加〕【義務】カスハラの事実が確認できなかった場合にも、同様に再発防止の措置を講じる(4(3)ハ、p.21)
- 〔追加〕【例示】必要に応じて事案の内容や対応の経緯を記録し、個人情報の取扱いに留意して関係部門に共有し、再発防止に活用している(4(3)ハ、p.20)
4. 特に悪質なものへの備え(措置⑧)
- 【義務】労働者に過度な要求を繰り返すなど、特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知している(4(4)、p.22)
- この方針は、1の対処の内容と別の文書にしなくてもよいとされています(解釈事項 問16、p.21)
- 【義務】その方針で定めた対処を実際に行える体制を整えている(4(4)、p.22)。体制の例として、関係部門間の連携が挙がっています(例①、p.23)
- 【例示】対処の例(警察への通報、警告文の発出、法令の制限内で商品の販売・サービスの提供等をしない、店舗・施設への出入り禁止、民事保全法に基づく仮処分命令の申立て)から、方針に書くものを選んでいる(4(4)、p.23)
- 出入り禁止を方針に定めても、悪質な事案で必ず講じる必要はありません。整備した体制の下で、方針に基づいて事案ごとに講じるかどうかを判断します(解釈事項 問15、p.20)