ハラスメント相談窓口を従業員に周知する方法|何を・誰に・いつ伝えるかと案内文の組み立て

相談窓口の周知は、6つのハラスメントの指針がいずれも求める措置です。窓口の連絡先と一緒に伝えること、パートや派遣・求職者等を含む対象、厚生労働省の案内文例の組み立て、届く方法と繰り返す時期を、一次資料の箇所つきで整理します。

更新
2026年10月5日
法令・資料の確認
2026年9月28日
読了の目安
12分
目次
  1. 周知が求められる3つのこと
  2. 誰に知らせるか
  3. 案内文の組み立て:厚生労働省の例文を分解する
  4. 案内文で、相談をためらう理由に答える
  5. どの方法で届けるか
  6. いつ知らせるか
  7. 周知したことを記録しておく
  8. 公的なひな形の入手先
  9. ハラスメント対策室でできること
  10. 次の一手

相談窓口を従業員に周知することは、パワハラ・セクハラ・妊娠出産等・育児介護休業等に関するハラスメントの指針がいずれも事業主に求める措置で、2026年10月1日からはカスハラと求職者等へのセクハラの窓口も加わりました。伝えるのは、窓口の連絡先に加えて、相談者のプライバシーを守ること、相談しても不利益に扱わないことの3つで、対象はパートや派遣を含む全員です(求職者等へのセクハラの窓口は、求職者等に知らせます)。社内ネットワークに載せただけでは足りず、載せたことを全員に知らせ、担当者が替わったときや人が入ったときに繰り返します。

周知が求められる中身と対象、厚生労働省の案内文の例をもとにした組み立て方、届く方法と時期を、指針と厚生労働省の資料の箇所つきで整理します。窓口の設置そのものが義務かどうかは「ハラスメント相談窓口は設置義務?」で扱っています。

周知が求められる3つのこと

労働施策総合推進法31条1項(パワハラ)や33条1項(カスハラ)の条文に「周知」という言葉はありません。これらの条文などが「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」を義務づけ、その中身として厚生労働省の指針が、窓口を定めて周知することを求めています。

窓口に関係して、指針が「周知」を求めているのは次の3つです。6つの指針で同じ構造になっています(育児・介護休業等の指針では第二の十四)。

周知すること 根拠(パワハラ指針の例) 指針が挙げる方法の例
相談窓口(誰に・どう相談するか) 4(2)イ(義務) 周知の方法の例は挙がっていない(求職者等向けの告示52号にだけ、パンフレット・ホームページ等の例がある)
相談者等のプライバシーを守る措置を講じていること 4(4)イ(義務) 社内報、パンフレット、社内ホームページ等に掲載し、配布等する
相談したこと等を理由に不利益な取扱いをされないこと 4(4)ロ(義務) 就業規則等に規定して周知・啓発する/社内報、パンフレット、社内ホームページ等に記載して配布等する

出典:パワハラ防止指針 p.6・p.8、告示51号(カスハラ) 4(2)イ・4(5)イ・ロ(p.16、p.23〜25)、告示52号(求職者等セクハラ) 4(2)イ・4(4)(p.11〜12、p.16〜17)をもとに編集部が作成。

3つ目の「不利益な取扱い」の対象には、相談したことのほか、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局に相談したことや調停を申請したことなども含まれます(パワハラ指針 4(4)ロ)。厚生労働省のパンフレットは、これらを相談窓口の設置の周知に併せて周知することが望ましいとしています(PDF p.35)。編集部としては、3つを1枚の案内にまとめて配ることを勧めます。一度で届き、どれかが抜けることを防げます。

パンフレットは、窓口を「あらかじめ定める」とは形式的に設けるだけでは足りず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうと説明しています(PDF p.29)。そのために、窓口を周知し、利用しやすい体制を整えておくことが必要だとしています。

誰に知らせるか

雇用する労働者の全員

指針の「労働者」は、正社員だけでなく、パートタイム労働者や契約社員などを含む、事業主が雇用する労働者の全てです(パワハラ指針 2(3)、p.1)。カスハラについて、解釈事項は、方針と対処の内容を所属部署や雇用形態を問わず全ての労働者に周知する必要があるとしています(問8・更問、PDF p.13〜14)。窓口の周知も、同じ「労働者」(告示51号 2(3))が対象なので、顧客と接しない部署の人にもカスハラの窓口を知らせます。

派遣で受け入れている人

派遣労働者を受け入れている会社は、派遣先としても、雇用する労働者と同じように指針の措置を講じる必要があります(労働者派遣法の規定により派遣先も事業主とみなされるため。パワハラ指針 2(3)、告示51号 2(3) p.4)。自社の案内を、派遣で来ている人にも届く場所と方法で配ります。

求職者等(求職者等へのセクハラの窓口)

2026年10月1日に始まった求職者等へのセクハラ対策では、窓口を「求職者等に」周知します(告示52号 4(2)イ)。指針が挙げる方法の例は、パンフレットやホームページ等です。解釈事項は、ホームページやパンフレット等で窓口の部署または担当者等の連絡先を示すことなどが必要だとしています(問34、PDF p.43)。

社内向けの案内とは読み手が違うので、採用ページや説明会の資料など、求職者等が目にする場所に載せます。プライバシーを守る措置を講じていることは、労働者と求職者等の両方に周知します(告示52号 4(4)イ)。対象となる求職者等の範囲は「求職者等へのセクハラ対策が2026年10月義務化」で整理しています。

フリーランスに業務を委託している場合

フリーランス法により、フリーランスに業務を委託する事業者で従業員を使用するものは、フリーランスからの相談に応じる体制を整える義務があります。パンフレットは、従業員向けの窓口をフリーランスも利用できるようにすることも可能だとし、相談者・行為者などのプライバシーを保護する措置を講じるとともに、相談したこと等を理由に不利益な取扱いをされない旨を定め、従業員とフリーランスに周知することが必要としています(PDF p.40)。委託先がいる会社は、案内をフリーランスにも届けるかを決めておきます。

案内文の組み立て:厚生労働省の例文を分解する

案内文の例は、厚生労働省のパンフレットに載っています(PDF p.44「ハラスメント相談窓口のご案内」)。ここでは例文を転載・改変せず、例文に入っている要素と、自社で埋める欄を示します。文言は原本で確かめてください。

例文は、日付と「従業員各位」、社長名から始まり、次の要素で構成されています。

  1. 根拠の規定:社内のハラスメント防止に関する規定の何条に定める窓口か。自社の規程の条番号を入れます
  2. 相談の方法:電話やメールでも受け付けること、一人で悩まずに相談してほしいこと。面談以外の方法を書きます(パンフレット PDF p.29 の、複数の方法で受けられるようにする工夫にあたります)
  3. 相談できる範囲:実際に起きている場合だけでなく、その可能性がある場合、放置すれば就業環境が悪化するおそれがある場合、ハラスメントに当たるか微妙な場合も含めて広く相談に対応し、事案に対処すること。指針 4(2)ロの「広く相談に対応し、適切な対応を行う」に対応します
  4. 窓口の一覧:本社・営業所ごとの担当者の部署・名前・内線・メールアドレス。例文では女性と男性の担当者を並べ、外部の窓口がある場合はその電話とメールアドレスも載せています。4(2)イの「窓口を定め、周知する」の中心になる部分です
  5. カスハラの窓口:「カスタマーハラスメント相談窓口」を別に並べています。パンフレットの注は、ハラスメント相談窓口は人事部門、カスハラは本社のカスタマーサービス部門や、各営業所の管理監督者・店舗の店長などを窓口とすることが想定されるとしています。カスハラの窓口の周知は告示51号 4(2)イが求めています
  6. プライバシー:相談には公平に、相談者だけでなく行為者等についてもプライバシーを守って対応すること(4(4)イの周知)
  7. 不利益な取扱いをしないこと:相談者はもちろん、事実関係の確認等に協力した人にも不利益な取扱いをしないこと(4(4)ロの周知)

1の条番号は、例文が規程で窓口を定めている会社を前提にしているためです。規程を持たない会社は、窓口をどこで定めたか(方針や社内の通知など)が分かる書き方に置き換えます。

5は、2026年10月1日の施行に伴って多くの会社が書き足す部分です。店長など、労働者の上司に当たる管理監督者等を担当者にする場合は、その人自身が相談できる窓口を別途設けることも考えられるとされています(パンフレット PDF p.29)。店長に言いにくい人の経路も含めた決め方は「カスハラ相談窓口の作り方」を参照してください。

求職者等に向けた例は、同じパンフレットの例3(PDF p.47、ホームページやリーフレットで周知する例)にあります。人事部に加えてコンプライアンス室の担当者を窓口に並べ、相談したことや事実確認に協力したことが採用選考の判断に影響しないことも書いた例です。

匿名で相談できるようにしている場合は、その方法と、匿名のままでは会社がとれる対応に限りがあることも添えます。伝え方は「ハラスメントの匿名相談窓口とは?」にまとめています。

案内文で、相談をためらう理由に答える

窓口の連絡先を知っていても、相談しない人はいます。厚生労働省の委託調査(令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査、令和6年3月)で、パワハラを受けて何もしなかった人(570人、複数回答)に理由を聞いた結果の一部と、案内文の要素を並べると次のとおりです。

何もしなかった理由(令和5年度) 割合 案内文で答えられること
何をしても解決にならないと思ったから 65.6% 相談を受けたら何をするか(広く相談に対応し、事案に対処すること)
職務上不利益が生じると思ったから 20.7% 相談や協力を理由に不利益な取扱いをしないこと
窓口や担当部署が公正に取り扱うと思えなかったから 11.2% 公平に、プライバシーを守って対応すること。担当者を複数並べること
相談できる窓口や担当部署がなかったから 10.9% 窓口の一覧と連絡方法
相談できる窓口や担当部署が分からなかったから 5.1% 窓口の一覧を、届く方法で繰り返し知らせること

出典:同報告書 図表169(PDF p.149)。項目名は「パワハラについて」「パワハラを取り扱う」を省いて表記しています。右の列は、パンフレットの案内文例(PDF p.44)の要素を当てはめた編集部の整理で、調査がこの対応関係を示しているわけではありません。

「窓口が分からなかった」は5.1%で、令和2年度調査(2.8%)より増えています。ただ、割合がはるかに大きいのは「解決にならない」「不利益が生じる」という見通しのほうです。連絡先だけの案内より、相談したら何が起きるか、何が起きないかを書いた案内のほうが、この理由に答えられます。

調査は2026年の改正前のもので、パワハラについての回答です。カスハラや求職者等の相談にそのまま当てはまるとは限りません。

どの方法で届けるか

載せたことを、全員に知らせる

指針がプライバシーの保護と不利益な取扱いについて挙げる周知の方法の例は、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に掲載して配布等することです(パワハラ指針 4(4))。パンフレットは、社内ネットワーク上に周知文書を掲載していても、掲載されていることを労働者が知らなければ周知しているとは言えないとし、掲載や更新のたびにメール等で全労働者に知らせることが必要だとしています(PDF p.41)。

手元と現場に残る形も使う

厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」は、窓口の使い方や、相談者が守られ安心して相談できる窓口であることを、ポスターなどの掲示で周知するよう勧めています(PDF p.33)。従業員に名刺大の携帯用カードを配っている例も紹介しています。ポスターには窓口の連絡先を必ず書くこととし、同じものを貼り続けず年1回程度作り替えると効果が高まるとしています(PDF p.34)。

同じマニュアルは、評価面接や個人面談で上司から伝える方法も挙げています(PDF p.34)。研修の時間がとれないパートタイム労働者などには、入社時に窓口を説明する、ポスター等による周知を強化するといった方法を勧めています(PDF p.31)。研修で周知・啓発する場合の考え方は「カスハラ研修は義務?」で整理しています。

相談の方法を複数書く

パンフレットは、相談を面談だけでなく、電話やメールなど複数の方法で受けられるよう工夫することを勧めています(PDF p.29)。店舗や現場で働く人が多い会社は、社用のパソコンを持たない人にも届く方法(紙の掲示、個人の端末から開ける連絡先など)を、案内にあらかじめ書いておきます。

いつ知らせるか

周知の回数は、6つの指針にも労働施策総合推進法の条文にも定められていません(編集部が確かめた範囲)。パンフレットは、周知・啓発は一度行えば良いというものではないとしています(PDF p.41)。一次資料が挙げる時期を並べると、次のとおりです。

  • 窓口を定めたとき・変えたとき:窓口を定めて周知すること自体が指針の措置です(4(2)イ)。2026年10月1日の施行に伴ってカスハラや求職者等の窓口を加えたら、全員に配り直します
  • 担当者が替わったとき:パンフレットの規定例は、窓口担当者の名前を人事異動等で変わるたびに周知するとしています(例1 第5条、PDF p.43)
  • 社内ネットワークに掲載・更新したとき:そのたびにメール等で全員に知らせます(PDF p.41)
  • 入社時期・異動の多い時期:パンフレットは、新入社員の入社時期や異動の多い時期に合わせた研修などで、全ての労働者に周知を図る工夫を挙げています(PDF p.41)
  • 定期的に:パワハラ対策の導入マニュアルは、トップのメッセージ発信を年2回(半年に1回)程度、ポスターの作り替えを年1回程度を目安に挙げています(PDF p.33〜34)。どちらもマニュアルの目安で、法令上の回数ではありません
  • 相談があったあと:指針は再発防止として、改めて方針を周知・啓発する等の措置を求めており、事実が確認できなかった場合も同様とされています(パワハラ指針 4(3)ニ、p.7)。パンフレットは、相談があったときは防止対策を再点検し、改めて周知を図るよう勧めています(PDF p.33)

周知したことを記録しておく

周知の記録について、指針やパンフレットに決まった様式は示されていません(編集部が確かめた範囲)。ここからは編集部の提案です。「いつ・誰に・どの版を・どの方法で」知らせたかを残しておくと、窓口の担当者が替わったときや、行政から説明を求められたときに確かめられます。

入社や派遣の受け入れで対象者が増えたら、その人に渡した日も残します。求職者等向けの掲載で控えておくのは、採用ページに載せた日と内容です。

公的なひな形の入手先

  • 厚生労働省のパンフレット(令和8年7月作成):相談窓口のご案内(PDF p.44)、方針と窓口をまとめた周知文の例(PDF p.45〜46)、求職者等向けの例(PDF p.47)
  • あかるい職場応援団のダウンロード資料:パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)は、参考資料7・8として周知用ポスターと周知用手持ちカードのひな形を用意しているとしています(マニュアル PDF p.34)。ダウンロード資料のページで個別に並んでいるのは参考資料1〜6と9なので、7・8は参考資料の一括ダウンロードの中身で確かめてください
  • 都道府県労働局の様式:たとえば宮城労働局は社内周知例(文書・チラシ)を公開しています。作成時期によっては2026年10月からのカスハラ・求職者等セクハラが入っていない場合があるので、各ファイルの内容を確かめてから使います

方針そのものの例文と周知は「カスハラ基本方針の例文」で扱っています。

ハラスメント対策室でできること

ハラスメント対策室は、従業員が相談の内容を整理し、会社があらかじめ定めた担当者へ共有するためのサービスです。ログインなしで開けるQRコード・URLがあるので、案内の「相談の方法」の一つとして載せられます(この入口からの相談は匿名です)。共有するまでは本人専用の相談整理スペースで、本人が共有を選ぶまで会社には何も届きません。内容の整理はAI(自動化された仕組み)が手伝い、判断と対応は会社の担当者(人)が行います。

窓口の担当者を定め、案内を全員に届けるのは会社の仕事で、この記事の手順はサービスを使う場合も変わりません。サービスの内容はハラスメント対策室でできることを見るから確かめられます。

次の一手

  1. 「周知が求められる3つのこと」の3つ(窓口・プライバシー・不利益な取扱い)が、今の案内に書かれているかを確かめる
  2. カスハラと求職者等の窓口を加え、パートや派遣で来ている人にも届く方法で配り直す。求職者等向けは採用ページ等に載せる
  3. 担当者の交代、入社、掲載の更新のたびに知らせることを、担当業務に書き込む

窓口の周知以外の措置も含めて、自社の状況は自社の対応状況を無料で確かめるで確かめられます。登録は不要で、回答は送信されません。

出典

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