ハラスメント研修のeラーニングを比べる軸は、料金の形、講座が扱うハラスメントの種類と更新時期、受講記録の取り方の3つです。料金は1人あたりの単価だけでなく、入社者や方針の改訂で1年に何回・何人へ届け直すかまで含めて比べると、実際の差が見えます。どのサービスを選んでも、自社の方針と自社で定めた対処の内容は、会社が研修に足す部分として残ります。
この記事では順位づけやおすすめはしません。販売元の料金は、各社が公開しているページで2026年9月28日に確かめた範囲だけを、料金の形の例として示します。料金や内容は変わるため、導入前に見積もりと講座の目次で確かめてください。
2026年10月1日から、研修で届ける中身が増えた
改正労働施策総合推進法は2026年10月1日に施行されました(施行期日の政令)。同法33条1項により、事業主はカスハラから労働者を守る雇用管理上の措置を講じる義務を負います。同じ日から、求職者等へのセクハラについても措置が求められます。
研修そのものは措置義務の項目ではありません。カスハラの指針は、自社の方針と対処の内容を労働者に周知・啓発する方法の例として「研修、講習等」を挙げています(4(1)イ②、p.13/4(1)ロ③、p.15)。これとは別に、同法34条2項は「研修の実施その他の必要な配慮」を努力義務としています。法的な位置づけの詳細は「カスハラ研修は義務?」で整理しています。
比較のうえで大事なのは、ここから出てくる2点です。講座が新しく義務の対象になった種類を扱っているかと、自社の方針と対処の内容をどこで足すかです。
料金の形は5つ:届け直すたびに何が増えるか
公開されている料金ページを見ると、料金の形はおおむね4つに分かれます。これに厚生労働省の公的な教材を加えた5つで比べます。
| 料金の形 | 公開されている例(2026年9月28日確認) | 届け直すときに増えるもの |
|---|---|---|
| 買い切り(動画データを購入) | リスキルのハラスメント対策研修:249,000円、利用期間・人数の制限なし。mp4で納品され、自社のLMS等で視聴する | 人数・回数では増えない。受講の記録は自社のLMSなどで取る(受講サイトの提供はオプション) |
| 期間レンタル(1人ごと) | 同じ講座のレンタル:4週間2,490円/人、2週間1,390円/人、1週間950円/人。インソースのハラスメント防止講座:1,870円(税込)〜/人 | 届けるたびに人数分かかる。入社者・改訂・事案後の再実施のたびに増える |
| IDの年間定額(講座の見放題) | JMAMのeラーニングライブラリ:マネジメントライブラリ(ハラスメント対策コースを含む)を100名で利用する場合、1か月1名あたり約400円(税込)。10名から、年間一括(2025年10月現在の価格としての表示。コースによって料金が異なる) | 同じ年の中で届け直しても増えない。年の途中の入社者はIDを追加する(月割り、最低金額の設定あり) |
| 自社の教材を載せるLMS(ライセンスの月額) | AirCourseのベーシック(自社コースのみ):1〜99ライセンスで年間一括300円、月間契約360円(1ライセンス・1か月、税抜) | ライセンス数で決まる。共通の教材は別に用意する(既製の動画コースも使えるプランは料金が別) |
| 厚生労働省の公的な教材 | 厚生労働省「あかるい職場応援団」の研修動画:申請や連絡は不要で、ページに料金の記載はない(2026年9月24日確認) | ページに料金の記載はない。研修動画の受講の記録は自社で取る |
※当社調べ(各社の公開ページを2026年9月28日に確認)。金額はページの表示どおりで、リスキルのページには税込・税抜の表示がありません。最新の料金・条件は各社のページでご確認ください。
1年で何回届けるかを先に数える
届け直しの回数は、会社の都合だけでは決まりません。厚生労働省の企業マニュアルは、研修を全員が受講して定期的に実施することが重要とし、中途入社の従業員やパート・アルバイト等にも入社時に研修や説明を行うよう勧めています(推奨、印字p.34)。指針も、カスハラが起きた後の再発防止の例として、方針と対処の内容の研修、講習等を改めて実施することを挙げています(4(3)ハ②、p.21)。
そこで比べる前に、次の3つを数えておきます(以下は当社の整理です)。
- 在籍者の数:パート・アルバイト、顧客対応のない部署、受け入れている派遣労働者を含めた人数
- 1年の入社者の数:入社のたびに1人ずつ届ける人数
- 全員へ届け直す回数:定期の実施、方針や対処の内容の改訂、事案の後
1人ごとのレンタルは、この3つを足した延べ人数に比例して増えます。買い切りとIDの年間定額は、延べ人数が増えても費用が動きにくい形です。人の入れ替わりが多い職場では、IDの追加の条件(JMAMは中途入社等で足りなくなった場合に月割りで追加)や、退職者のライセンスを入社者に付け替えられるか(AirCourseは可能と記載)も見ておきます。
販売元に確かめる7つの問い
料金の次に、講座の中身と記録の取り方を確かめます。公開ページで分からないことは、販売元に直接聞きます。
- 目次に、自社に要る種類が入っているか。 同じ「ハラスメント研修」でも、扱う種類は講座で違います。リスキルの上記の講座はセクハラとパワハラを扱い、同社のサイトには別にカスハラ研修のカテゴリがあります。JMAMのライブラリには、カスタマーハラスメント対策コースがあります。インソースの上記の講座の目次は、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントです。カスハラを全員に届けるなら、カスハラを扱う講座を組み合わせます。
- 撮影日・更新日はいつか。 カスハラと求職者等セクハラの指針は、2026年2月26日に告示されました。撮影日や更新日を公開している販売元もあるので、それより前の講座なら、指針の内容をどう扱っているかを聞きます。
- 自社の方針と対処の内容をどこで足せるか。 足し方は3通り見られます。自社の教材をサービス上に載せる(JMAM、AirCourse)、販売元が組織の方針や社内規定の説明を動画に盛り込む(インソースのカスタマイズ)、買い切りの動画を自社のLMSで自社の資料と並べる(リスキルの買い切り)、の3つです。
- 採用面接の担当者向けに、自社の面談ルールを載せられるか。 求職者等セクハラの指針は、面談の時間と場所の指定、実施体制、やり取りに使うSNSの種類などの規則を定め、労働者に周知・啓発する研修、講習等を例に挙げています(4(1)ハ①、p.10)。規則は会社ごとに違うので、汎用の講座には入りません。
- 受講状況を人ごとに出せるか。確認テストは料金に入っているか。 リスキルのレンタルは各受講者の実施状況を出力でき、全講座にテストが付いています。インソースの上記の講座は、テストがオプション(11,000円、税込)です。
- 契約が終わった後、記録はどこに残るか。 リスキルのレンタルは閲覧結果等を利用終了後も見られると書いています。AirCourseの有料プランは受講履歴の保存期間を無制限としています。どの場合も、契約を終える前に記録を自社で書き出して保管しておくと、販売元を変えても記録が途切れません(当社の提案)。
- 受講に何分かかるか。 受講を業務として求める研修の時間は、労働時間として扱います(労働時間の適正な把握のためのガイドライン 3ウ、p.2)。動画が長いほど、勤務時間の中に確保する時間も増えます。
受講記録に残す項目と保管の考え方は、ハラスメント研修の受講記録の残し方で整理しています。