ハラスメント行為者の懲戒処分|指針の求めと、処分を決めるときの考え方

ハラスメントの事実が確認できたら、行為者に対する措置を適正に行うことは事業主の義務です。懲戒はその例の一つです。懲戒の前提になる就業規則と労働契約法15条、厚生労働省の資料が示す判断要素、処分の種類と法律上の上限、最高裁判決の考え方を、処分を決める順に整理します。カスハラの顧客との違いも扱います。

更新
2026年10月5日
法令・資料の確認
2026年10月5日
読了の目安
17分
目次
  1. 指針が求めるのは「行為者に対する措置を適正に行うこと」
  2. 懲戒するための前提
  3. 処分の重さを決める判断要素
  4. 最高裁判決で見る当てはめ(海遊館事件)
  5. 処分を決める順番
  6. ハラスメントと判断できないとき
  7. 処分のあとにすること
  8. 判断に迷うときの相談先
  9. ハラスメント対策室でできること
  10. よくある質問
  11. 次の一手

ハラスメントの事実が確認できたら、行為者に対する措置を適正に行うことは、厚生労働省の指針が事業主に求める義務です。懲戒はその措置の例の一つで、指針は配置転換や行為者の謝罪などと組み合わせ、事案の内容や状況に応じて選ぶ形で示しています。懲戒をするなら就業規則の定めが前提です。処分が行為の性質や態様に照らして重すぎれば権利の濫用として無効になる(労働契約法15条)ため、厚労省の資料が示す判断要素に沿って重さを決めます。

この記事が扱うのは、事実確認を終えて行為者への措置を決める場面です。相談を受けてから事実確認までの流れは、ハラスメント相談を受けた後の対応の記事が対象です。就業規則への規定の書き方は扱いません(ハラスメント・カスハラを就業規則にどう書くかの記事が対象です)。会社の処分が有効かどうかは個別の事情で決まるため、この記事は判断の材料と順番を示すところまでにとどめます。

指針が求めるのは「行為者に対する措置を適正に行うこと」

パワハラの指針は、事実関係を確認し、ハラスメントが生じた事実が確認できた場合には「行為者に対する措置を適正に行うこと」を求めています【義務】(パワハラ指針 4(3)ハ、p.7)。措置を適正に行っていると認められる例は、次の2つです【例】。

  1. 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書のハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずる。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずる
  2. 調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を、行為者に対して講ずる

例の文言は「必要な懲戒その他の措置」です。義務になっているのは行為者への措置を適正に行うことで、どの事案でも懲戒にすることまでは求めていない、と編集部は読んでいます。注意・指導や配置転換で足りる事案もあれば、懲戒と配置転換を組み合わせる事案もあります。

行為者が誰か、行為者への措置がどう位置づけられているかの違いは、ハラスメントの種類ごとに次の表のとおりです。

ハラスメント(行為者) 行為者への措置の位置づけ 指針の箇所
パワハラ(自社の労働者など) 【義務】事実が確認できたら措置を適正に行う。例は規定等に基づく懲戒その他の措置、関係改善の援助、配置転換、謝罪 告示5号 4(3)ハ(p.7)
セクハラ 【義務】同上 告示615号 4(3)ハ(p.5)
妊娠・出産等に関するハラスメント 【義務】同上(例に配置転換はない) 告示312号 4(3)ハ(p.6)
育児・介護休業等に関するハラスメント 【義務】同上(例に配置転換はない) 告示509号 第二の十四(三)ハ(ハ)(p.6)
求職者等へのセクハラ(自社の労働者など) 【義務】同上(例は懲戒その他の措置、引き離すための対応、謝罪) 告示52号 4(3)ハ(p.14〜15)
カスハラ(顧客等) 行為者への措置の項はない。特に悪質なものへの対処の方針を定め、対処できる体制を整える【義務】 告示51号 4(3)(p.17〜22)、4(4)(p.22〜23)
自社の労働者が他社の労働者にしたカスハラ 他社の協力の求めに応じて事実が確認できたら、規定等に基づく懲戒その他の措置【望ましい】 告示51号 5(2)(p.26)

各指針は2026年10月1日適用版で確認しています(セクハラ指針、妊娠・出産等の指針、育児・介護休業指針、告示52号、告示51号)。頁はPDFの頁です。

カスハラの顧客は懲戒の対象にならない

カスハラの行為者は顧客等で、自社が雇う労働者ではありません。そのため告示51号の事後の対応は、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止の3つで、行為者への措置の項はありません(4(3)、p.17〜22)。厚労省の解釈事項も、改正法は事業主に雇用管理上の措置を義務付けるもので、「事業主が何らかの措置を行う法的な権利や権限を新たに設けるというものではなく」、対処の内容は各事業主が実態に応じて定める必要があるとしています(解釈事項 問17、印字p.22)。

顧客等への対処として、指針は、特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、その対処を行える体制を整備することを義務としています(4(4)、p.22)。対処の例は、犯罪に該当し得る言動の警察への通報、警告文の発出、法令の制限内での商品の販売やサービスの提供の停止、店舗や施設への出入りの禁止、民事保全法に基づく仮処分命令の申立てです(p.23)。カスハラが起きたときの流れはカスハラ対応フローで扱っています。

自社の労働者が取引先にカスハラをしたとき

逆に、自社の労働者が取引先など他社の労働者にカスハラをし、その会社から事実確認への協力を求められた場合は、協力の求めに応じるよう努めなければなりません【努力義務】(告示51号 5(1)、p.26)。事実が確認できたら、就業規則等の規定に基づいて行為者に必要な懲戒その他の措置を講ずることが望ましいとされています【望ましい】(5(2)、p.26)。解釈事項は、信用失墜行為や服務規律違反に対する懲戒規定など既存の規定で必要な措置を講じられるなら、「必ずしも就業規則等を改正し、カスタマーハラスメントに係る規定を新たに設ける必要はない」としています(問18、印字p.23)。告示51号の項ごとの性質は告示51号を項ごとに読むで確かめられます。

懲戒するための前提

懲戒の根拠は就業規則の定めです。厚労省のモデル就業規則の解説は、最高裁判決(国鉄札幌運転区事件、昭和54年10月30日)を引いて、「就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできません」としています(モデル就業規則 第68条の解説、p.88)。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、制裁の定めをする場合、その種類と程度を就業規則に記載しなければなりません(労働基準法89条9号)。

懲戒の事由に当たる事実があっても、処分が重すぎれば無効になります。労働契約法15条は、懲戒が「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています(労働契約法15条)。解雇についても、同じ考え方の定めがあります(16条)。

モデル就業規則の解説は、さらに3つの注意を挙げています(第68条の解説、p.88〜89)。

  • 規律違反の程度に応じ、過去の同種事例における処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要がある。公正と認められない処分を懲戒権の濫用として無効とした裁判例もある
  • 就業規則に懲戒規定を設ける前の行為に、さかのぼって懲戒処分をすることはできない
  • 1回の懲戒事由に該当する行為に対し、複数回の懲戒処分を行うことはできない

懲戒規定でハラスメントを読めるかどうかに不安があるときは、処分を決める前に規定を確かめます。告示が求める規定の形(現行の懲戒規定の対象になる旨を明確にする方法を含む)は、ハラスメント・カスハラを就業規則にどう書くかで整理しています。

処分の重さを決める判断要素

厚生労働省の資料が示す要素

厚労省のパンフレットは、ハラスメントに対する「対処の内容」を規定する方法として、言動と処分の内容を直接対応させた懲戒規定を定める方法のほかに、どのような言動がどのような処分に相当するかの判断要素を明らかにする方法を挙げています(パンフレット 印字p.26)。その規定例(例5)が挙げる判断要素は次の3つです(印字p.47)。

  1. 行為の具体的態様(時間・場所(職場か否か)・内容・程度)
  2. 当事者同士の関係(職位等)
  3. 被害者の対応(告訴等)・心情等

例5は、これら以外の判断要素として、犯罪性の有無、反復・継続性、行為者の改悛の程度等も考えられるとしています(印字p.47)。社長名の周知文の例(例2)も、同じ3つの要素を総合的に判断して処分を決めるという書き方です(印字p.45)。

パワーハラスメント対策導入マニュアルは、会社としての対応案を検討するときに踏まえる要素を、もう少し細かく挙げています(印字p.39)。相談者の被害の状況(身体的、精神的な被害の度合い)、相談者・行為者・第三者への事実確認の結果、相談者と行為者の人間関係、行為の目的や動機、時間や場所、行為の程度(質)や頻度(量)、相談者と行為者のそれぞれの行動や発言に問題があったと考えられる点、就業規則の規定内容、裁判例(どのような場合に企業や行為者の法的な責任が問われているか)の9つです。

同じ要素は、厚労省の委託事業で作られた令和7年度の相談窓口担当者向け研修資料にも載っています(スライド17〜18)。研修資料の事例では、行為を知りながら対応しなかった上司も懲戒処分の対象になっています(スライド21)。

国家公務員の例:人事院の懲戒処分の指針

民間企業向けに、どの言動がどの処分に当たるかの目安を国が示した資料は、パンフレットの規定例(例4)のような例を除いて、編集部が確認した範囲では見当たりません。参考として名前が挙がることが多いのが、人事院の懲戒処分の指針です。これは国家公務員の任命権者が処分量定を決めるための参考として作られたもので、民間企業には適用されません。処分の種類も、免職・停職・減給・戒告と、民間企業の就業規則とは呼び方が違います。

それでも、処分の重さをどう組み立てるかの構造は参考になります。指針は、非違行為の動機・態様・結果、故意・過失の度合い、職責、他の職員や社会に与える影響、過去の非違行為の有無などを総合的に考慮するとし、管理監督の地位にあるなど職責が特に高いときや、過去に類似の非違行為で懲戒処分を受けたことがあるときは、標準例より重くすることが考えられるとしています(第1 基本事項)。パワー・ハラスメントの標準例は、相手に著しい精神的・身体的苦痛を与えた場合と、指導や注意を受けたのに繰り返した場合と、相手を精神疾患に罹患させた場合とで、処分の種類を分けています(第2 標準例(15))。

処分の種類と、法律上の注意

処分の種類は、自社の就業規則に定めたものから選びます。モデル就業規則の解説は、処分の種類は規程例のものに限定されず、公序良俗に反しない範囲で事業場ごとに決めることも可能だとしています(第67条の解説、p.87)。

処分の種類 中身の例 使うときの注意
けん責 始末書を提出させて将来を戒める(モデル就業規則 第67条) ―
減給 始末書を提出させて減給する(同) 1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は一賃金支払期における賃金の総額の10分の1まで(労働基準法91条)
出勤停止 一定の日数を限度に出勤を停止し、その間の賃金は支給しない(同) 日数の上限は就業規則で定める(モデル就業規則は日数を空欄にしている)
降格・諭旨解雇 パンフレットの例4・例7と導入マニュアルに、処分の種類として挙がっている モデル就業規則の第67条にはない。使うなら就業規則に種類として定めておく(編集部の整理)
懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時に解雇する(モデル就業規則 第67条) 解雇予告手当を支給せずに即時に解雇するには、所轄の労働基準監督署長の解雇予告除外認定が要る(労働基準法20条、モデル就業規則 第67条の解説)

出典はモデル就業規則 第67条と解説(p.86〜87)、パンフレットの例4(印字p.47)と例7(印字p.50)、導入マニュアル(印字p.40)です。

最高裁判決で見る当てはめ(海遊館事件)

判断要素がどう使われるかは、判決で確かめるのが確実です。ここでは、ハラスメントの行為者への懲戒処分の有効性を最高裁が判断した海遊館事件(最高裁第一小法廷 平成27年2月26日判決、平成26年(受)第1310号)を、判決文で確かめた範囲で紹介します。厚労省のあかるい職場応援団も裁判例として取り上げています。

水族館を運営する会社の管理職(課長代理)の男性従業員2名が、派遣労働者等の立場にある女性従業員らに対し、職場で1年余にわたって性的な発言等のセクハラを繰り返しました。処分は、出勤停止30日と10日の懲戒処分と、これを理由とする1等級の降格です。高等裁判所は出勤停止を重すぎるとして無効としましたが、最高裁は出勤停止も降格も有効としました。

最高裁は、まず行為の重さを職責と結びつけて評価しました(判決文 p.8)。会社はセクハラの防止を重要課題と位置付け、禁止文書を周知し、研修への毎年の参加を全従業員に義務付けていました。2名は研修を受け、管理職として部下を指導すべき立場にあったのに、多数回のセクハラ行為等を繰り返しており、判決はこれを「その職責や立場に照らしても著しく不適切なもの」としています。

被害者から明白な拒否の姿勢を示されていなかったことは、行為者に有利にしんしゃくしないとしました(判決文 p.8〜9)。被害者は内心で著しい不快感や嫌悪感を抱きながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、抗議や会社への被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや、行為の内容等が理由です。

事前に警告や注意を受けていなかったことも、有利な事情とはいえないとしました(判決文 p.9)。管理職として会社の方針や取組を当然に認識すべきであったうえ、行為の多くは第三者のいない状況で行われ、会社が被害の申告を受ける前に警告や注意をできた機会はうかがわれないためです。そのうえで、過去に懲戒処分を受けたことがないことや、出勤停止に相応の給与上の不利益が伴うことを考慮しても、処分は重きに失するとはいえないと結論づけています(判決文 p.9〜10)。

この判決から読み取れることを、編集部は2つに整理しています。1つは、会社が日頃から方針を周知し研修を行っていたことが、行為者が方針を「当然に認識すべきであった」という評価の前提になったことです。もう1つは、被害者が抗議しなかったことを、処分を軽くする理由にしなかったことです。ただし、これは1つの事案の判断で、この会社では出勤停止が懲戒解雇に次いで重い処分でした。ほかの事案で処分の重さを決める目安にはなりません。

処分を決める順番

ここからは編集部の提案です。指針、モデル就業規則、厚労省の資料に書かれていることを、処分を決める順に並べ直しました。各段の根拠をかっこ内に示します。

  1. 認定した事実を書き出す。いつ、どこで、誰に、何を、何回したか。双方の言い分が食い違った点と、どう認定したかも残す(判断要素の「行為の具体的態様」「頻度」に当たる)
  2. 就業規則の懲戒事由に当てはめる。どの条項に当たるかを特定する。定めのない事由では懲戒できない(モデル就業規則 第68条の解説)
  3. 選べる処分の種類と幅を確かめる。減給の上限や懲戒解雇の手続など、法律の制限も確かめる(労働基準法20条・91条)
  4. 判断要素を当てはめ、過去の同種事例と比べる。態様、当事者の関係、被害者の心情、反復・継続性などを総合して重さを決め、以前の処分と釣り合っているかを見る(パンフレット 例5、モデル就業規則 第68条の解説)
  5. 就業規則に定めた手続を踏む。懲戒委員会などの定めがあればそれに従う。労働契約法と労働基準法に、懲戒の前に本人の言い分を聞くことを定めた条文はありません。それでも、認定した事実を本人に示して言い分を聞き、記録に残すことを編集部はすすめます
  6. 懲戒以外の措置を組み合わせる。被害者と行為者を引き離す配置転換、行為者の謝罪、関係改善の援助などを、被害者への配慮とあわせて決める(各指針 4(3)ロ・ハの例。例の範囲は指針によって違うので、上の表を参照)
  7. 決めた理由を記録し、本人に説明する。導入マニュアルの事例では、懲戒委員会で処分を検討しています(印字p.42)。研修資料は、行為者がハラスメントの自覚を持っていない場合もあり、「十分な説明もなく処分すると、不利益取扱いと受け取り」、行為者自身も心身の健康に不調を来す可能性があるとして、処分の理由を説明し理解してもらうことが重要だとしています(スライド22)

手順の途中で事実の認定に迷ったら、1に戻ります。判断要素は、認定した事実の上でしか使えないからです。

ハラスメントと判断できないとき

導入マニュアルは、事実確認と評価の結果を3つのパターンに分けています(印字p.39)。

  • パワハラがあったと判断できる場合
  • パワハラがあったと判断することはできないが、そのままでは事態が悪化する可能性があり、何らかの対応が必要な場合
  • パワハラの事実が確認・評価できない場合

2つ目のパターンでは、対応案の検討で重要なのは、パワハラに該当するかどうかを判断することではなく、行為者の行動や発言にどのような問題があったのか、どうするべきであったのかを明確にすることだとしています。そのうえで、問題を具体的に示して行為者に改善を促すよう勧めています(印字p.39)。研修資料も、ハラスメント全般について同じ整理をしています(スライド17〜18)。懲戒にしない場合も、注意・指導という形で行為者への対応は残ります。

3つ目のパターンでも、再発防止の措置は講じなければなりません【義務】(パワハラ指針 4(3)ニ)。事実が確認できなかったときの進め方はハラスメント相談を受けた後の対応で扱っています。

パンフレットは、事実が確認されたのに問題を軽く考えて内密に処理しようとしたり、個人間の問題として当事者の解決に委ねたりする対応は、問題をこじらせ解決を困難にすることになりかねないとしています(印字p.32)。

処分のあとにすること

処分で終わりにしないことは、厚労省の資料に共通しています。パンフレットは、行為者に懲戒規定に沿った処分を行うだけでなく、その言動がなぜハラスメントに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切だとしています(印字p.32)。導入マニュアルは、行為者と相談者の双方に、会社として取り組んだこと(調査、対応の内容とその考え方)を説明して理解を得ること、同じことを繰り返す行為者には上長が継続的にフォローすることを挙げています(印字p.43)。

懲戒規定に基づき処分を受けた労働者を通常の業務に戻す前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせることを、パワハラの指針はパワハラに該当しないと考えられる例に挙げています(パワハラ指針 2(7)ハ(ロ)②、p.3)。

あわせて、2つの義務が続きます。1つは再発防止の措置で、方針を改めて周知・啓発するなどの措置を講じます【義務】(4(3)ニ)。もう1つはプライバシーの保護で、事後の対応では相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じます【義務】(4(4)イ、p.8)。処分の内容を社内のどこまで知らせるか、相談者に何を伝えるかも、この保護とあわせて決めることを編集部はすすめます。

判断に迷うときの相談先

導入マニュアルは、対応案の検討で判断に迷った場合の相談先として、顧問弁護士、社会保険労務士、弁護士会の法律相談、都道府県労働局の総合労働相談コーナーを挙げています(印字p.39)。特に重大・深刻な事案や、相談者が懲戒処分等を希望している場合は、手遅れにならないうちに解決方法を弁護士や社会保険労務士に相談するよう勧めています(印字p.40)。

ハラスメントに当たるかどうかを、都道府県労働局が個別に判断することはありません。厚労省の解釈事項は、事実関係を迅速かつ正確に確認することは事業主の義務で、労働局は個々の事案がハラスメントに該当するか否かの判断を行わないとしています(問45、印字p.54)。

事案が起きた企業向けには、厚生労働省の委託事業の伴走型支援があります。労務管理に精通した専門家が無料で全4回の伴走支援を行い、行為者に対する適正な措置等について助言します。オンラインでの対応も可能です。

ハラスメント対策室でできること

ハラスメント対策室は、従業員の相談が会社の担当者へ届くまでと、届いたあとの記録を支えるサービスです。従業員が本人専用の相談整理スペースで整理した相談内容は、本人が共有を選んだときに会社の担当者へ届きます。内容を整理するのは自動化された仕組み(AI)で、事実確認や処分などの判断と対応をするのは会社の担当者です。処分の重さを決める機能はありません。

共有された相談の画面には「対応の記録」があり、「行為者への対応」などの種類を選んで、行ったことを追記できます。記録は追記式で、過去の行は書き換わりません。手順の5と7で残す記録の置き場所として使えます。

よくある質問

カスハラをした顧客を処分できますか

懲戒は、自社が雇う労働者に就業規則を当てはめるものなので、顧客等は対象になりません。顧客等への対処は、方針に定めた対処(警告文の発出、出入り禁止など)と、犯罪に該当し得る言動の警察への通報などです(告示51号 4(4)、p.22〜23)。改正法は、事業主が顧客等に対して何らかの措置を行う法的な権利や権限を新たに設けるものではないと、解釈事項は説明しています(問17、印字p.22)。顧客側が問われうる刑事・民事の責任は、カスハラに罰則はあるかで整理しています。

行為者が経営者や役員です

パワハラの指針の措置は、事業主(法人の場合はその役員)が行うパワハラも対象にしています(パワハラ指針 4、p.5)。ただ、社内で解決するのが難しい場合もあります。研修資料は、その場合に都道府県労働局の総合労働相談コーナーや、都道府県庁、都道府県労働委員会などの行政機関を利用すること、労働組合との交渉の場を活用することも検討するよう示しています(スライド23)。

相談者が処分を望んでいないときは

行為者への措置は、事実が確認できたときに事業主が講じる義務です。一方で、行為者や第三者への聴取を相談者が望まない場合について、茨城労働局の一次対応担当者のためのチェックリストは、確認ができなければ会社としてこれ以上の対応(行為者への指導や処分等)はできないことを説明するよう示しています(p.1)。相談者の意向の確かめ方はハラスメント相談を受けた後の対応で扱っています。事実が確認できた後の措置の選び方(懲戒にするか、配置転換や注意・指導にするか)に相談者の心情をどう反映させるかは、例5の判断要素「被害者の対応(告訴等)・心情等」として検討できる、と編集部は考えます。

次の一手

処分を決める場面で慌てないためには、懲戒規定がハラスメントを読めるか、相談を受けたときに誰が何をするかが、前もって決まっていることが要ります。無料の対応状況チェックには、就業規則その他の服務規律を定めた文書に行為者を厳正に対処する旨を規定しているか、相談を受けたときの手順と記録の仕組みがあるかを尋ねる設問があります。カスハラ対策を中心にした8領域・16問で約2分、登録もメールアドレスも不要です。

出典

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